Nandito Ako (14) [Nandito Ako]

Nandito Ako エピソード14


【ボルタのヘアサロン】
ジョシュ:(アラジンの靴を見ながら) これ、自分で直したの?
テレサ:ジョシュ、コーヒー飲む?いま淹れてあげるね。
ジョシュ:ううん、僕はだいじょうぶ。
テレサ:いいの、いいの、ぜんぜん手間じゃないから!いま淹れるね。
ジョシュ:ほんとに僕は結構です、ありがとう。ただ、これをあなたに渡したくて。(お金を差し出す) あなたが僕にしてくれたことに比べれば、たいした額じゃないけど、でも、できる範囲で手助けしたかったんだ。
テレサ:ジーンときちゃった、ジョシュ。ありがとうね。でも、これはもらえない。ほら、とっていて。
ボルタ:ちょっと、待って!待ちなさいって!なんてもったいないことするの!ひとの優しさを拒むもんじゃないわ!ほら、もらって!
テレサ:どんなにお金が必要だからって、私は施しに飛びついたりしないの。他人の親切心につけ込んだり、むやみに利用するべきじゃない。そんなことするから、他国の文化から私たちは、みんな金目当てだって思われちゃうのよ。もっと誇りを持つべきよ。
ボルタ:私、なんだか泣きそう・・・。それでも、ここはもらっとくべきと思うけど。
テレサ:ジョシュ、このお金は、あなたがお母さんを探すために使って。ほら、持ってて。ありがとう。ほらほら、しまって!じゃ、コーヒー飲む?
ボルタ:お金、ほんともったいないわあ・・・。
テレサ:もう、いいの!
(ドアをノックする音、アーニャが帰宅)
ジョシュ:ホリーはどうだった?大丈夫だった?
アーニャ:ジョシュ、ホリーは大丈夫よ。スティーブ叔父さんも、ホリーに対してなにも悪いことはしてないって。だから、ジョシュは心配しないように、ってホリー言ってた。
ジョシュ:無事でよかった・・。
テレサ:それで、ホリーとジョシュはいつ、お母さんを探しに出かけるの?
アーニャ:ジョシュ、申し訳ないんだけど、ホリーはもう一緒にバタンガスへ行けなくなったの。ホリーのお母さんが厳しく見張ってるのよ。それに、どうやらあなたの叔父さんが、ホリーを尾行するように手配したみたいなの。私、さっき気づいたんだけど、ホリーの家から帰るとき、男が私をつけてきてた。でも、その男はうまくまいてきた。
テレサ:ウソでしょ!?
ジョシュ:なんだって?
ボルタ:頭が:おかしくなりそう!
ジョシュ:なにがなんでも自分の思い通りにしようとしてるんだ!
ボルタ:待って、待って!てことは、これからは今までの3倍は注意しなくちゃならないわね。いつスティーブ叔父さんがここに現れるか、わからないわ!
ジョシュ:明日の朝早く、僕はここを出たほうがよさそうだ。
テレサ:ちょっと待った!じゃあ、誰と一緒に行くの?
アラジン:お姉ちゃん以外に誰がいるのさ!
ボルタ:そうよ~、一緒に行きなさい。
ジョシュ:いやいやいや、大丈夫、僕ひとりで行くよ。もうこれ以上、誰にも迷惑かけたくない。とくにアーニャには。もう十分すぎるほど、やってくれたから。
アーニャ:ジョシュの言う通りだわ。私、家のことをほっぽって行くわけにいかない。
ジョシュ:これまでのことはありがとう。
ボルタ:あなた、ジョシュと一緒に行ったらどうなのよお・・・、ほらあ・・・。

【アーニャの家】
(ジョシュ、荷造りしてる)
アラジン:ねえ、ほんとうに行かなくちゃだめ・・・?
(台所で)
アーニャ:あそこでなにしてたの?
アラジン:お姉ちゃん、ジョシュに悪いと思わないの?
アーニャ:なんで私が、ジョシュをかわいそうに思うのよ?ジョシュはお金持ちなのに。そもそもジョシュよりも、うちのほうが大変なのよ。
アラジン:でもお姉ちゃん、ぼくたちには家族がいるよ。お母さんもいる。でもジョシュには?叔父さんがいるけど、陰険なだけじゃなくてウソつきなんだ!
アーニャ:でも、ジョシュなら誰かほかの人に助けてもらえるわよ。
アラジン:ぼくがもっと大人なら、一緒に行ってあげるのにな。そしたら、ジョシュはお母さんを見つけられるでしょ。
アーニャ:あんたが?
アラジン:だって、ぼくはジョシュの気持ちがわかるんだ。ぼくも、お父さんに会いたい。お母さんは会わせてくれないけど。だから、ジョシュを助けてあげたいの。

【アーニャの寝室】
テレサ:ねえ、アーニャ。わかってるわよ。寝たふりはやめなさい。起きてるのはわかってるんだから。ジョシュのこと考えてるんでしょ?さっきジョシュと話してたとき、ジョシュの目が、どれだけお母さんに会いたいかを物語ってた。彼は、ひとりではどうすることもできなかった。マニラは初めてで、この場所に馴染みがないから。いま、ジョシュを助けてあげられるのは、あなただけなのよ。
アーニャ:でもお母さん、私、学校があるもの。もし、奨学金がさらに危なくなっちゃったらどうする?
テレサ:学校?だって週末よ!月曜日までには戻って来れるわよ!休暇だと思えばいいわ。そうだわ!荷物に水着も入れてあげる!ビーチがある場所に行くんでしょ?!
アーニャ:お母さん、なんでもかんでも冗談にするのはやめてくれる?
テレサ:冗談なんか言ってない、アーニャ。ジョシュには、あなたが必要なの。ジョシュと一緒に行きなさい。いい?
アーニャ:そのあいだ、お母さんとアラジンはどうするの?
テレサ:自力でなんとかするわ。私がすべて、やりくりするから。 さあ、おいで・・・。

【バスの中】
ジョシュ:きみが一緒に来てくれて、すごく嬉しいよ。感謝してもしたりない、アーニャ。
アーニャ:やめてよ。私のお母さんのために来ることにしたんだから。あんたのためじゃない。お母さんが、私に一緒に行くように、って言ったの。
ジョシュ:拒否することもできただろ?でも、しなかった。それで、僕たちふたりでお母さんに会いに行くんだ~!だから、どうかよろしく、アーニャ!(アーニャの手に手を重ねる)
アーニャ:(ジョシュの手をふりほどく)
ジョシュ:ねえ、アーニャ。ときどき、きみを見てると、僕のお母さんを思い出すんだ。
アーニャ:え?私ってそんな歳に見える?
ジョシュ:そういう意味じゃないんだ。言いたかったのは、きみは賢くて、意志が強い。僕のお母さんみたいに。お母さんは強い女性だった。僕をひとりで育ててくれた。それに、とてもかわいらしい人だった。だから、きみと似てる。
アーニャ:私をからかってるだけなんだわ・・・。(携帯が鳴る) もしもし?
ホリー:もしもし、アーニャ。そっちのようすはどう?いま移動中?
アーニャ:うん、いまバスの中。ふたりでバタンガスに向かってるとこ。
ホリー:ジョシュは?元気にしてる?
アーニャ:いま隣にいる。
ホリー:ありがとう、アーニャ。ほんとに感謝してる。私の愛するひとへの約束を果たせるのは、あなただけ。ところで、あっちの家の住所を送ったけど、受け取った?
アーニャ:大丈夫。道はすぐにわかるわ。
ホリー:じゃあ、ジョシュのお母さんの住所は?どうやって行くか、わかる?
アーニャ:ううん。でもあっちに行ってみれば、わかると思う。それに、ジョシュが地図持ってるし。
ホリー:アーニャ、ジョシュといま話せる?
アーニャ:もちろん。ちょっと待って。(ジョシュに携帯渡して) ホリーよ。
ジョシュ:もしもし?
ホリー:ジョシュ!調子はどう?
ジョシュ:大丈夫だよ。
ホリー:ジョシュ、バタンガスまで一緒に行けなくなってごめんね。
ジョシュ:心配しなくていいよ、きみの事情はわかるから。僕のほうこそ謝らなくちゃ。お母さんとのこと、こじらせちゃって。
ホリー:そんなこと、あなたにはなんの責任もない。私たち、もともと対立してたから。じゃあ、ジョシュ、もう切らなくちゃ。じゃあね。
ジョシュ:わかった、ありがとう。じゃ。
(バスが急停車する)
ジョシュ:大丈夫?

【アーニャの家】
アラジン:お母さん。
テレサ:なに?
アラジン:お母さんは、ぼくのお父さんのこと、すごく怒ってる?愛してもいなかった?
テレサ:本当のとこはね、私はあんたのお父さんを愛してたけど、お父さんが、私を愛してくれなかったのよ。私が妊娠してるってわかったら、突然どっかへ行ってしまった。二度と、戻ってこなかったの。
アラジン:お母さん、ごめんね。
テレサ:あんたが謝らなくてもいいのよ!ぜんぜん悪くないんだから。
アラジン:でも、ぼくのせいで、お父さんはいなくなったんだ。
テレサ:あんたはとはなにも関係ないの。お父さんが自分で決めたことなんだから。それに、お父さんがいなくなって私は傷ついたけど、でもいいの。大切なのは、お父さんはとっても素敵な贈り物を残してくれたってこと。なんだかわかる?あなたよ!
アラジン:ほんとに?お母さん?
テレサ:そうですとも!だから、あなたにはアラジンて名前をつけたの!だって、お話に出てくるアラジンは、いつも願いを叶えることができるんだもの。そして、あなたこそが、私の願いを満たしてくれる子なのよ。
アラジン:お母さん、ありがとう!
テレサ:アベルよ。
アラジン:アベル?
テレサ:それが、あなたのお父さんの名前。
アラジン:ジョシュお兄ちゃんが、お母さんに早く会えるといいなあ。そしたら、お兄ちゃんの願いも満たされるよね。
テレサ:ほんとそうよね。

【バスの中】
(アイスクリーム売りのベルの音)
パブリートの言葉:ベルの音が聞こえたら、それが恋に落ちた合図っすヨ!
アーニャ:アイスクリーム食べたいの?
ジョシュ:ううん。ただ、ちょっと思い出してたんだ。
アーニャ:今度はなに?私がアイスクリームに見える?
ジョシュ:あははっ。
アーニャ:もう、いい!私を笑えばいいんだわ!もう私、帰っちゃうから。バスを降りてやる!
ジョシュ:きみっておもしろいよアーニャ。笑った顔がまたいい。(頬をつつく)
アーニャ:からかうのはやめてくんない?少し寝たら?まだまだ先は長いのよ。
(ベルの音)
ジョシュ:どうしても笑っちゃうよ!

【ホリーの家】
(ホリーがアルバムを見ている)
ヤヤ:ホリー。どうかお母さまのこと、分かってあげようとして。
ホリー:ヤヤ、私、もう疲れたわ。できる限りのことをしてきたのに、いつも失敗しちゃう。いつも、間違っちゃうの。
ヤヤ:だからこそ、お母さまを分かってあげてほしいのです。
ホリー:私、ずっと分かろうとしてきたわ。でも、何度もお母さんに傷つけられて、もうなにも感じなくなってきた。ねえヤヤ、ときどき、私の親が違うひとだったらなあって思うことがあるの。違う家族に生まれたかった、って。裕福じゃなくてもいい。幸せならば。

【ホリーの家】
ヤヤ:お母さまの言うことには従いなさい。あの方は、それでもあなたのお母さまなのですから。もちろん、あなたが従わなければ、お母さまはお怒りになります。
ホリー:従う以外に私が、なにをしてるって言うの?お母さんの言う通りに、私はお母さんのためになんでもしてる。そうすれば、お母さんが私を愛してくれるかと思って。なのに、どうしてお母さんと心が通じあわないの?
ヤヤ:お母さまにもう一度、チャンスをあげてください。あなたはまだ、関係を修復できますよ。お母さまとお話しして、許してもらうようお願いするのです。謙虚になるのですよ。あなたは、娘でしょう。私が見てる限りでは、お母さまはそれでもあなたを愛していらっしゃいます。
ホリー:そうだといいんだけど、ヤヤ。ほんとうに、そう願うわ。だってあなたのように、血の繋がっていないひとですら、私のことを愛してくれてる。なのに、なぜお母さんはだめなの?なぜお母さんは愛してくれないの?自分の母親なのに。

【バスの中】
(アーニャが寝ているジョシュを見つめる)
ジョシュ:僕を見てる。
アーニャ:あんたが誰にも気づかれてないかどうか、確かめてただけよ。ほら、フードを下げて!もらった住所と地図はある?ちょっと見せて。
ジョシュ:自分で見てみようと思ったけど、無駄だった。見慣れない場所だから、どんなとこなのかぜんぜんわかんない。
アーニャ:なにこれ?私も地理は得意じゃないから・・。 ちょっと、今度はなんで私をまじまじ見てるの?
ジョシュ:きみはきれいだ。
アーニャ:もう、やめてったら!私たち、バタンガスへ行くことに集中しなくちゃならないの。そういうばかげたことはもう、やめ!
ジョシュ:本当のこと言っただけだよ!きみのボーイフレンドは幸せ者だな。
アーニャ:ご参考までに申しますが、私にボーイフレンドはいません!
ジョシュ:なんで?
アーニャ:私に、そんなことしてるヒマはないの。もう、いちいちそういうくだらない質問するのは、やめてくれない?
ジョシュ:くだらなくなんかないよ!恋は、魔法のようなものなんだ。お母さんがよく言ってた。お母さんとお父さんが恋に落ちたとき、魔法のようだったって。まるで、おとぎ話かなにかのようだったって。きみは、魔法を信じる?
アーニャ:昔はね。でも今は、もう信じてない。
ジョシュ:なぜ?
アーニャ:なぜなら、そんなもの存在しないから。
ジョシュ:ただそう言ってみせてるだけだろ?いままで恋をしたことないものだから。
アーニャ:なら、あなたは恋をしたことあるの?

【バスの中】
(車掌が町名を告げる)
アーニャ:ジョシュ!もうすぐよ。あと町をもうひとつだって。

【ホリーの家】
ヤヤ:マルガレート奥さま、お話があります。
マルガレート:なんなの?
ヤヤ:ホリーのことですが・・・。
マルガレート:ヤヤ・ロサ、あなたが話があるって言うと、いつもホリーに頼まれたことばかりなのね?
ヤヤ:違うんです。いま私が奥さまと話してることは、ホリーはなにも知りません。奥さま、私は、ホリーが気の毒でなりません。時を経るごとに、奥さまのホリーへの態度はどんどん厳しくなっていっています。
マルガレート:それは、ホリーが頑固だからよ!
ヤヤ:頑固だからですか?それとも、ただ奥さまが、ホリーを愛していないからではないですか?私は、奥さまがホリーを養子になどしなければよかったのにと、思うんです。
ホリー:(物陰から聞いて) 私は、養子なの・・・?


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